〜酒井雄二 編〜



 大学に入った村上てつやのメンバー探しの旅は、まだ続いていた。村上が大学内を歩いていると、奇抜なファッションの背の高い男に「酒井、今日の服似合ってるな、かわいいよ」と、別の男が話しかけた。その時、「ブチッ」と血管の切れる音があたりに響きわたった。
「かわいいだとぉ〜、この俺に向かってかわいいだとぉ〜、貴様、ぶっ殺してやる!」と妙に響く声で叫びながら、酒井という男はかわいいと言った男に「ビシッ、バシッ、ボスッ」と効果音を口にしながらテンポの良いリズムでパンチとキックを繰り出していた。そのリズム感、響く声が村上の魂を揺るがした。
「こいつが欲しい」村上は思った。
酒井の相手はその内に一人から数人に増えていった。次の瞬間、村上は酒井のケンカ相手の一人にドロップキックを決めていた。その後、二人は目出度く勝利を勝ち取った。
「俺が、かっこいいって言われるようにしてやるから、俺について来い」
村上のこの言葉で、さっきまで見ず知らずだった二人は硬い握手をかわし、酒井雄二はメンバーの一人となった。別れ際、村上は鼻血を垂らしながら酒井に言った。
「俺達仲間なんだから、俺がケンカしてるの見たら助けにこいよ」


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