第1話



近々、おゆうぎ会の開かれる「そうる幼稚園」。
あ、歌声が聞こえてきましたよ。

「♪へいっ!へいっ!へいっ!へいっ!も〜にかぁぁ、へ・・」
「むつおっむつおっ!!」
「ああ、てっちゃん。先生もさ、おゆうぎ会に出ようと思って練習してるんだよ。
 やっぱり、広島人は『カープときっかわこうじ』だよ。それとさ、てっちゃん
 僕は、せんせい!むつおせんせい!」
予餞会と勘違いしてる睦雄せんせいであった。

「むぅつぅお〜、あまいな。広島はまず、矢沢栄吉に吉田拓郎、浜田省吾に
 奥田民生、ブルームオブユースに19、ポルノグラフィティもいたな。
 だいいち、広島の音楽の歴史はなぁ・・」
「・・・てっちゃん、今年でいくつ?」
「みっつ!!」
高々と指を4本だしながら、自慢げにてっちゃんは言い放ったのです。
睦雄せんせいは思った。こんな三本指も満足に作れないような、子供に音楽を語られるなんて・・。

しゅんとなった睦雄先生に立て続けにてっちゃんは、楽しそうに話を続けます。
「そんなことよりさ、おれさ、おゆうぎかいで、おおかみさん役やるんだぜ。
 おおかみ!かっけーよな!いーだろー」
「う、うん。よかったねぇ」
「むつお、子分にしてやってもいいぞ!」

顔に笑顔をいっぱい浮かべたてっちゃんを見て、睦雄せんせいはまた思った。
『狼』って悪者の代表格じゃん。ふっ・・気の毒に・・・。
さあ、そんなことより、もにかの練習練習。

「むつおせんせーい!!ゆうちゃんが!」

いけ!睦雄せんせい。戦え!睦雄せんせい。そうる幼稚園の園児は手強いぞ。


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